case06 子どものため、家族のための家づくり

家中に響きわたる、長女のNちゃん(3歳)と
歩き始めたばかりのK君(1歳)の
くったくのない笑い声。
さらに、奥様のお腹にいる
赤ちゃんが加われば、
3人の子どもたちでもっと賑やかになるはず。
だから、家づくりに際しては特に
「子育て」に重点を置き、
子どもに適した教育を施すための、
さまざまなアイデアが詰め込まれています。

自然に勉強したくなる!? 「頭のよくなる」さまざまなアイデア

なぜ「教育」を重視するのか

Hさん一家のために設計されたHさんだけの家。「100%以上の満足を感じています。家ができてから、私たち家族は生まれ変わったようです」と感想を述べるご夫妻。その言葉の真意はどこにあるのか、そして家づくりの経緯や建築家とどのように心を通わせ、1軒の家をつくりあげていったのでしょうか。

第二子の誕生をきっかけに、家を建てることを決意したHさん夫妻。そして、結婚当初から子どもは3人欲しいと思っていたご夫妻は、家づくりはおのずと「子育て」「教育」を重視することとなりました。

「私の好きな映画、『たそがれ清兵衛』の中に、清兵衛が娘に論語を読ませる場面があります。『針仕事は役に立つけど、論語は何の役に立つの?』と尋ねる娘に清兵衛は、『論語をやれば自分で考える力がつく。世の中が変わっていくときに自分の頭で考えて行動できること。それはとても大切なことだ』と説きました。私はその言葉にとても共感したのです。私たち自身も子どもも、『自分の頭できちんと理解し、考えて行動できれば、どんな時代も生きていける』と信じています」とご主人は独自の教育観について語ってくださいました。


「夜になれば、間接照明で陰影を楽しめるリビングダイニング。周囲の壁と天井が照らされると、空間に広がりが生まれるます。真っすぐに連なるダウンライトの意匠は建築家のこだわり。回遊性があり広々としたリビングは子どもたちの遊び場として活躍。床材のカバ桜は、無垢材の柔らかさと温かみがあります。


テレビボード背面の壁を中心にして、ぐるぐるとまわれる回遊性のある間取り。子どもたちは1階フロアを運動場のように駆けまわっています。


和室にも回遊性を持たせたので、玄関側とリビングの2方向から出入りすることができます。また、和室に出窓を設け、飾り棚としても使用できるように工夫。奥行き30cmの出窓だから、外観とも調和デザインに。

回遊できる間取りが、子どもを
のびやかに健やかに育てる

そこで、建築家の山本一成さんとともに導き出した答えのひとつが「回遊性」と「つながる間取り」でした。H邸の間取りは、1階にLDK、それに繋がる和室、そしてキッチンの裏側に浴室。つまり玄関から室内に入ると正面に階段があり、その階段とLDKを仕切る壁を中心にして回遊することができるわけです。

さらに、回遊できるのはここだけでなく、キッチン~浴室~廊下も行き止まりがなく、2階も階段室を中心に一周することが可能。子どもたちは、てんとう虫の車に乗って、または素足のままで、無垢の床のやさしい感触を感じながらぐるぐると家の中を走りまわっています。

奥様のMさんはこう語ってくださいました。「常に前に進める...、ぐるっと回ってまた同じ位置に戻る...。回遊動線の楽しさで、ぐるぐると駆け回る子どもたちはいつも笑顔いっぱいです。行き止まりがなく、常に前進できる気持ちの良さ。回遊できる家の動線は考える空間としては最適なのではないでしょうか。動線を間違うことがなく、さまざまなことに前向きになれる間取りだと思います。こうした"楽しい余裕"とともに、ぶつからないように注意するなど、"家族や他人への配慮"も回遊動線は可能にしてくれます」

また、回遊できる間取りなら、極力廊下をつくらずに済み、限られた敷地が有効利用できるといった大きなメリットもあります。

どのような照明が子どもによい影響を与えるのか

「以前住んでいた借家は蛍光灯の直接照明だったのですが、今回はすべて間接照明にしました」と奥様。ご夫妻は、山本さんの設計した住宅の完成見学会で、大工さんの手づくりの間接照明を目にし、そのあたたかい雰囲気にとても惹かれたそうです。照明と建築が融合し、使い勝手やメンテナンスもしっかりと考えられていた点にも魅力を感じました。「間接照明は多灯ですから、時間帯・目的によって、どれをつけるかで雰囲気を変えることができます。限られた空間の室内では、家具やインテリア等で模様替えをしなくても、目的に沿った光の演出ができるのはとてもいいですね。それに、間接照明のおかげで子どもたちは自然に眠りにつくようになったんですよ」(奥様)

また、リビングで活動するときは明るくし、DVDを観たあとなどクールダウンするときは間接照明を少なめにつけて、落ち着いた雰囲気をつくり出すなど、シーンごとに合わせて、生活の中で照明を効果的に使い分けているそうです。陰影をつくり出し、室内に表情を生む間接照明。子どもの頃から細やかな光の効果を感じ取れれば、情操教育にも一役買うはずです。

さらに、使用頻度の少ないスイッチに透明カバーをつけることで、押し間違えることを防ぐなどの気配りで、省エネにも配慮。また、H邸ではセンサーライトを多用していて、人の気配を察知すると自然に点灯してくれるので、子どもたちも安心して家の中を移動できます。


スペースを上手に活用! 遊びながら学べる住まいができた!

家のあちこちに自然に学習できる場を設ける

家のあちこちにある、子どもたちが頭を使ったり、手を使ったり、体を動かしたりできる場所も、教育に一役買っています。

例えば、階段下のいつも通る動線上ある"ギャラリー"。テレビボードの裏を利用したその壁にはガルバリウム鋼板とメラミンを交互に貼って、マグネットの着脱ができるように工夫しています。子どもの描いた絵や写真をディスプレイし、さらに、あいうえおの文字や世界地図などを貼ることで自然と勉強できる環境に。いろいろな形状のマグネットをつけたり、はずしたりするのも子どもたちには楽しいようで、姉弟が仲良く遊ぶ場所でもあります。

また、2階の多目的ホールには卓球台を設置。子ども室やダイニングテーブルだけでなく、卓球台も勉強机として利用できるわけです。この空間にはチョークレスボード(黒板)を壁に掛けてあり、お絵描きやさらにはボードを使って両親が勉強を教えることも可能なのだとか。


山本さんの事務所の壁をヒントに、マグネットを着脱できる「ギャラリー」を設けました。階段を下りた正面にあるので、子どもたちも自然に目に入ります。材料はガルバリウム鋼板とメラミン。

「親の背を見て子は育つ」
2階にもアイデア満載

2階には、これから成長していく子どもたちのために、子ども室を3室用意しています。現在は2室をワンルームとして使用しており、将来は仕切れるように可変性を持たせた設計です。

そして西側の子ども室はご主人の書斎とも繋げているのが、2階スペースのポイントの1つ。その狙いについて奥様曰く、「階段を上って、すぐに目に入る場所に書斎をつくりました。父親の背中を見ながら、子どもたちが育つ環境をつくりたいと思ったのです」。

勉強だけではなく、ご主人の趣味でもあるバイオリンを教える予定もあるそうです。また、2階の多目的ホールに卓球台を設置したのは、自由に体を動かせるようにとの思いを込めて。そんなアイデア満載の家なら、親子のコミュニケーションが不足することはなさそうです。


合理的な家づくりを考えたら... 快適で健康的な毎日が実現!

家中を把握できる、家事のしやすい「らくちん住宅」

「子育てもさることながら、主婦は毎日の家事も手は抜けません。教育テレビで子どもたちが番組を観はじめた4時からが私の家事タイムなんですよ。夕食をつくりつつ、水まわりの掃除をするんです」という奥様。キッチンから浴室へ、浴室からトイレへと流れるように、そして回遊できるように配されているから、その動線はとてもスムーズです。

冬場は洗濯物を外に干せない新潟の気候。だから、室内に洗濯物を干すことも織り込み済み。洗濯物が乾けば脱衣室に設けた収納に、パジャマや下着などを即仕舞えるように考えられています。

「キッチンは対面式で、1階の居室がすべて見渡せます。さらに、開放的な南に向かっているため、庭や家の外の様子もわかり、かなり贅沢な空間になりました。勝手口のゴミスペースや水まわりへの家事動線がよく設計されているので快適そのもの。家事でイライラすることはなくなりましたね(笑)」



左:シューズボックスの上は、小物を飾るディスプレイ空間。壁に貼った小さなタイルは、吸放湿性のあるINAXのエコカラット。奥さまのアイデアで余ったサンプルを上手に活用。
右:丸窓から光が差し込む明るい玄関。キッチンと玄関の動線が良いので、来客時もすぐ対応できます。


上:洗濯機とガス乾燥機は死角に配置しているので、洗面脱衣室は見た目もスッキリ。広々と使うことができます。

下:キッチンの裏側に洗濯機・乾燥機のある洗面脱衣室が  あるので、料理と洗濯を同時にすることも可能。動線が  短く、家事の効率もアップ。

データを作成し検証!
家族の健康を守ってくれる快適な家

やはり、何よりも家族の健康は大切。データ集めやまとめることが得意な奥様は、新居に暮らし始めてからの温度・湿度をグラフにつけはじめました。すると、湿度は平均40〜50%に保たれていることが明らかに。そのせいか、風邪をひかなくなったといいます。そこで、家族が病院に行く回数もデータをとってみたところ、結果は歴然。以前の借家で暮らしていたときよりも、通院回数はかなり減ったそうです。

快適な温度や湿度を保っていられる最も大きな理由は、内断熱でセルローズファイバーを採用したこと。おかげで冬場はガス温水ファンヒーター1台で1階全体が十分に暖まります。一方、夏は階段の吹き抜けに窓、各居室に設けた欄間により、風が家中を抜けていきます。そんな快適な空気環境が、大切な家族の健康を守ってくれているのです。

図

「家ができてから、家族が生まれ変わったように感じました」
奥様談

家づくりの過程で、要望を伝えることの難しさを感じました。特に難しかったのは、「自分や家族が何を希望しているのか」を見つけ出すことです。建築家や家族とのコミュニケーションの中で、やっと自分と家族の気持ちに気づき、本当の「家族の姿」に出会えました。

また、この家づくりを通して、自分が求めるものが、必ずしも自分に合ったものや、目的を達成するものとは限らないことを学びました。「もっと笑顔あふれる家族になれる」提案をしていただいた建築家の山本さんに感謝です。

この家には、家族が「繋がり」や「一体感」を持て、将来にわたって用途を模索できる「可変性」があります。家族間の距離が近くなり、いつも理解し合えるようになったと実感しています。「毎日成長し、生まれ変わる家族の新しい関係」を楽しんでいます。